狼な彼と赤ずきん
「さすが、騎士団長の息子ね……」



私はやっとの思いで憎まれ口を叩いた。


しかし、彼にその皮肉は伝わっていないようだ。



「ああ、騎士団長の息子たるもの、常に皆に平等であれと教育されてきたからな。それに俺は平和的な方法をとったんだ。二週間の間にお前を返せば、森に攻め込まないと。しかし、せっかく話し合いの場を設けたのに、奴らは要求をのまなかった」



その話し合いというのは、戦いの前日、私の意志を確認しに狐がやってきた日のことだろうか。


まさか、こんなことになるなんて。


分かっていたら、私は森から出て行ったのに――。


ますます瞳から熱い雫が、とめどなくあふれてくる。



「泣かなくてもいい。俺の作戦は功を奏した。奴らは全滅だ」



誇らしげに胸を張る彼に、私はいらだちを通り越して呆れを覚えた。
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