嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
嘘だと言って
肌にぶつかる風が氷の様に冷たくて。
体は凍える様に寒いのに。
私の心は火傷するのではないか、というくらいに熱かった。


「……なに?」

「べつにー?」


その理由は考えなくても分かる。
キミが隣にいるからだ。

繋がれた手が凄く熱くて。
汗ばんでしまうくらいに。

12月に入って。
キミと過ごす季節がまた1つ増えた今日この頃。
私は幸せに満ちていた。


「そんなに嬉しいの?クリスマス」

「うん!」


間髪なくキミに頷き返す。

そんな私を呆れた顔で見つめるキミ。
でも私には分かるんだ。
正輝だって楽しみにしてるって事くらい。

だって、さっきまで私の顔を見ていたキミは顔を逸らしてそっぽを向いていた。
キミが照れている証拠だ。

昨日の事だった。
LINEで、キミは唐突に私を誘ったんだ。
『クリスマス、一緒に過ごそうね』って。
それが嬉しくて私は朝からテンションが高いんだ。


「本当に可愛いねアンタって」

「なっ……!?」

「嘘じゃないからね」


念を押した様に言うキミ。
顔は笑ったままで、どうやら楽しんでいる様だ。
でも、その言葉に偽りはないと思うと怒るに怒れなくて。
恥ずかしさだけが残っていくんだ。


「もう!」


やり場のない想いを握りしめていた手にぶつけた。
ぎゅっと手を握りしめれば小さく笑われる。


「痛くないって」


お返しにと言わんばかりに手を握り返される。


「痛ッ!!ちょっ……!!」


キミは本気じゃない。
それは笑ったままのキミを見れば分かる事だ。
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