おためしシンデレラ
「いや、ほんまもんの夫婦みたいやなと思ってな」
莉子も笑う。
「たしかに」
ほんのりと温かい空気に包まれたような気がした。
傲慢、強引、オレ様、三村を修飾する言葉はどれも良い意味には捉えられないけれど、それでも一緒に暮らしてみて優しいところがあることも知った。
近くに寄るとドキドキするし、不意に触れられると揶揄われているだけだと分かっているのに心が騒ぐ。
同居期間が1ヵ月で良かった。
もっと長ければ勘違いして恋になってしまったかもしれない。
仕事をきっちり終わらせて、莉子は帰り支度をして会社を出ると地下鉄に乗り真っ直ぐいつものスーパーに向かった。
このスーパーで買い物するのもあと何回だろうと莉子は少し感傷的になる。
カートを押して食品の陳列棚の間を押して歩いていると、後ろから長い腕が伸びてきてカートの押し手を掴んだ。
「社長、来はったんですか?」
横に立つ人を見上げる。
「たまには付き合ってやる」
「お留守番が寂しかったんですか?」
頭を軽くはたかれた。
「マメのクセに生意気やな」
2人で笑いながら買い物を続ける。他人には仲の良い夫婦に見えるだろうか。