オレンジの雫
しかも、父が見つけてきた相手は、セシーリアよりも15歳も年上の中年男。

まだ、多感さが残る彼女の目に叶うはずもない。

腹立ち紛れに、丘の上の屋敷を飛び出したセシーリアは、ひどく憤慨したまま、強く唇を噛み締めた。

絶対に、結婚なんてするものか…!

そう思った彼女の頭上には、地中海の色をそのまま映したような、瑠璃色の空が横たわっている。

その澄み渡る空の隅に、黒い雲が広がり始めていく。


通り雨が、降るのかもしれない…

あの日と…

三年前のあの日と同じ、通り雨が…

彼女の胸の内には、愛しい人がいる…

その人と出会った、あの日のように…

甘い雫を降らす、通り雨が…
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