潮風とともに



「あ、私会社に電話しなくちゃ。ごめんね、さっきから電話ばかりして……」

申し訳なくなって一言謝ってから、会社に電話をかけた。


数コールしてから、またあの間延びした声が聞こえてきて、思わず脱力してしまう。


「万里江?重田だけど。部長に代わってもらえる?」

私が部長に変わるように伝えると、はーーいと返事が聞こえたものの、保留音が鳴らない。
どうしたのかと思っていたら、また万里江の声が聞こえた。


「瑠碧さーん。婚約、破談になったんですねー。私、ビックリしちゃいましたよぉ。
だってぇ、先月結納したばかりだったじゃないですか。
 
カルティエの婚約指輪もらってー、
結納金だってあれだけの金額もらったのにぃ。
それに、先輩もタグホイヤーの時計あげてたのに。

どうしてですかーー?もしかしてぇ、彼氏さんが浮気してたとか?それだとしたら、先輩かわいそぉー
捨てられたってことですよねぇー。ふふっ」



「……万里江、その話、どこから聞いたの。」



私のあまりに低い声に車内の三人がこちらに怪訝な顔をむける。先程まで賑やかだった車内がシーンとしている。


「えっ、えー?どこからって、部長からに決まってるじゃないですかぁ。」

少し焦ったような万里江の声に、心が冷えていくのが分かった。


「そう。部長から聞いたんやね??

プライバシーの保護もなにもあったもんじゃないわね。

ねぇ、万里江。もし万が一、貴方が部長でない人から今回の事を聞いたのだとしたら……

私の兄を通して、貴方にも、そしてご実家にも内容証明が行くことを覚悟しなさい。」
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