火曜日に、天使
僕たちのいるリビングに静寂が漂った。

僕の口から聞こえるサクサクという軽やかなクッキーの音だけが、その隙間を埋めていた。

「夫は何が言いたかったんでしょう」

疲れたように奈津子は言った。

「そうですね。こういうのは“ありがとう”“幸せに”“愛してる”が大半を占めますからね」



「あの人は…自分のことしか考えていなかった。正直清々したの。娘のためにも良かったのかもしれない」


それは“死んで良かった”ということだろうか……?

奈津子は目を固く閉じて何が考えているようだった。

その黒い長髪が小刻みに揺れていた。



「あのぅ奥さん、ご主人の最期の一言、何かメッセージが隠されているんじゃないでしょうか?」


なんだか今回は早く帰れなそうな予感がする。
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