堕天使と呼ばれる女
「まずは、ワシが何故、組織を抜けられたのか…

 聖羅はそのからくり、知っておるな?」


「はい。

 教授が能力の"無能力化"の研究を、単独で成功させたからですよね?


 そのノウハウを盾に、『いつかノウハウを組織に渡す』ことと、『組織に対して一切の攻撃を加えない』ことを条件に、組織の脱退を上層部に了承させた…


 組織に対して攻撃を加えないと言っている教授に対して、能力が無能力化されてしまうというリスクを犯してまで、組織はそのノウハウを早急に手に入れる必要が無かった…」


「ほっほっほ…

 さすが聖羅じゃ。
 ワシが話す事なぞ、無いんじゃないかと思うくらいじゃな…


 そうじゃのぉ…

 まずは昔話から聞いてもらうとするかの。」


そう言って、渡辺教授は何かを思い出すように静かに目をつむり、昔の話を始めた。


教授がまだ若い頃、発表した論文が組織上層部の目に止まり、組織earthの一員になった頃の話…


まだ若い故に、ひたすら研究に没頭出来た頃の話だった…

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