空を祈る紙ヒコーキ

「涼のことが好きだよ。妹にこんなこと言ったらダメだって分かってるけど……」

 空は瞳を伏せた。頬が赤くなっている。初恋みたいなその反応が意外だった。前に彼女がいたと言っていたし、こういうことには慣れているのだと思っていたから。

 嬉しくなる。空が私のことを好きなんて夢にも思わなかった。愛大にも平等に優しいし暁に対しても面倒見がいい。こうして告白されていなかったら空は博愛主義者なんだと思うところだった。それくらい私や周囲の人々に対する空の扱いには差がなかった。

「まだ信じられない。好かれてるって」

「最初涼にあんなこと言ったしな」

「好きになるなーとか、そういう?」

 それがあったから私も気持ちを隠すしかなかった。でも今は不思議とそのことを責めようとは思わない。むしろ水に流せそうだ。

「もういいよ。言うことコロコロ変わるのは私も同じだし」

 そう。私だって誰も好きにならないと決心していてこの有様だ。今は空が好き。

 お互いに同じ気持ちなら私達は付き合うことになる? 両想いの経験なんて初めてで今もまだ実感がないし、たとえ付き合うとしても今の関係とどう変化するのかよく分からない。

 この前こっそりネットで調べたら、血のつながらない兄と妹は結婚もできるらしい。だったら同じ屋根の下に暮らす家族同士であっても空とは彼氏彼女になるのが可能ってことだ。

 かといって、ただ調べてみただけで今はそこまで空との関係を発展させるつもりもなかった。永遠に片想いだと覚悟していたし、こうして空の気持ちを告げられた今も私は空にまだ好きだと言えていない。

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