空を祈る紙ヒコーキ

「死んだ人の弟に恨まれてるってこと? そんな、まさか……。だってそんなことしてたら普通に高校生やっていられるわけないし。何かの間違いだよね? 否定してよ」

『法的に裁けず見逃される罪もあるんだよ……』

 これまでに何度か見た空の影がいま鮮明に私の記憶を埋め尽くした。そのことが空の言葉に信憑性を持たせていく。

『大切な親友を殺したんだ。俺は』

 だから幸せにならないと決めている。私と付き合わないのもそのため。……悲しいほどきっぱりした言い方で空は告げた。

『前に、俺は欠けてるって話したの覚えてる? 切り落とされたそれはもう元には戻らない。罪を背負って生きていく。義理の兄が、部長が、こんな奴でごめんな』

 こんなに悲しい人の声音を、私は聞いたことがなかった。









失い、欠けたもの(終)

< 146 / 169 >

この作品をシェア

pagetop