空を祈る紙ヒコーキ

 テレビで俺達の曲を聴いていたらしく、あの後歩からLINEのメッセージが届いた。

《今はまだ心から謝れないけど、今までツイッターでひどいことたくさん言ってごめん。来年の命日までには空と一緒に兄ちゃんの墓参り行けるようになりたい。》

 あのライブを通して俺の気持ちは伝わったんだろう。聴いてくれただけで充分だ。一生赦してくれなくていい。だからまた一緒に歩と宝来の話をしたいと思う。


 愛大や涼の運に引き上げられたのか、先日俺の投稿したマンガが大賞一歩手前の賞を取ることができた。お金目当ての投稿ではもちろんないけど賞金額も今までもらったのとは比べ物にならないほど高かった。今までは投稿先の雑誌に総評が載るだけだったのに、今回は編集部の人から直々に電話がかかってきたので感嘆した。

『ネックになっていた心理描写の方だいぶ克服できましたね! 何か心境の変化があったんですか?』

「成長させてくれる人に出会えたんです」

『編集部一同、夏原さんの今後の作品に期待しています』

「次はデビューしますから」

 口に出したことで決意はより確かなものに変わった。読む人を幸せにする、時を忘れて夢中にさせる、そんなマンガ家に俺はなる。

 どうしても今までは本気で夢を目指す気になれなかった。宝来を追いつめた俺に夢など追う資格はないと思ったし、たとえ夢を叶えられたとしても夢を叶えた自分を後ろめたく感じ潰れてしまいそうだったから。そうなるくらいなら初めから保険を設けておいた方がいい。それほど勉強に熱意があったわけじゃないのに特進科へ進んだのも、三年に進級してすぐ四年制大学への進路希望を出したのも、そのせい。

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