拗らせ女子に 王子様の口づけを
「あれ?どうしたの三矢?」
確かにここは最寄り駅だしここで会っても不思議じゃない。
「お前……一人で帰ろうとしただろ?」
「いや、普段から一人で帰ってるしね」
「……はぁ。俺も今帰りだから。送る」
「は?いいよ。何言ってんの?大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃないの。ほら、いくぞ」
そう言うと私の手を取って改札に向かって歩き出す。
「えっ、ちょっと、三矢!」
私の抵抗も虚しくずんずん歩く三矢に引きずられるように追いかけた。
「あの、は、秦野さん!ごめんなさいっ、またっ、」
「え、えぇ。気を付けてね」
改札を潜ってホームに立って、やっとこの状況に文句を言おうと口を開きかけたとき、三矢の手が離された。
そういえば、奏ちゃん以外の人と手を繋いで歩くなんて初めてだ。
ただ、引っ張られただけでそんな気にすることじゃないって分かっていても、相手が三矢で緊張することじゃないって分かっていても、慣れないこの状況に嫌な汗が出る。
ち、違う違う。
暑いだけ。
汗が出るのは暑いだけだからっ!
そう思うと言おうとしていた文句がすぐに出てか来なかった。
「どうした?」
「っ、」
三矢が不思議そうに顔を傾けて私を覗き込んできた。