拗らせ女子に 王子様の口づけを




結局、沙織と会話することもなく送別会は終了した。
元々飛び入りで参加した俺は濱本主任に挨拶をして一次会で帰ることにした。

沙織と話したい。

今のままじゃ嫌だ。

店の外で周りを見渡し、沙織を捜した。
相変わらず横には三矢の姿。
俺の居た場所にあいつがいる。
焦燥感に駆られて声をかけた。

「沙織、」

俺が声をかけると嬉しそうに目尻を下げてふわりと笑っていた沙織が、肩を大きく跳ね上げ困ったように眉を寄せて俺を見上げる。

「奏ちゃん…………」

くそっ、なんでこんな顔……。

「沙織は……二次会行くのか?」

「えっ、ど、どうしようかなって……」

いつもなら、帰りのこともあるしお前行かなかっただろ?色々面倒くさがって他の奴等に隙を見せずに帰ってただろ?

「俺は行かない。だから━━━━」

「早川、帰りなら俺が送るから大丈夫だ。濱本主任、お前仲良かったもんな。もう少し居たいんだろ?」


俺の言葉に被せて、沙織の言葉を代弁するように三矢が促す。

……っ、なんでお前が答えんだよ。

なぁ、帰らないか一緒に。
祈るように沙織を見つめる。

< 143 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop