拗らせ女子に 王子様の口づけを
すぐ後にもうひとり沙織の横に座った男が居た。誰だ?
挨拶をされる。
沙織の同期のようだ。
朝礼で話してたやつか。
「ククッ、沙織の同期なんだ?宜しく。こちらこそ、沙織がいつもお世話になっています」
「奏ちゃん、私がお世話をしてるのよ?」
頭にある三矢というこの男の手を払いのけ、口を尖らせる。
はいはい、と軽く流しつつも、剥れるその顔が可愛い。
俺のセリフと俺達の空気に三矢の顔が歪む。
わっかりやすいなー。
パクパクとお弁当を食べる沙織のお弁当を覗く。
あっ、俺の好きな玉子焼き。
俺の視線に気づいた沙織がお弁当の蓋に玉子焼きを乗せてくれる。
やった。変わりにこの紅生姜をやろう。
沙織、好きだったろ?
俺はキライだけど。
無言のやり取りに守屋から突っ込まれる。
「熟年夫婦かッッ」
的を得た突っ込みに笑ってしまった。
血の繋がりは無いが、俺の沙織に対する想いは家族そのものだ。
「私は好きなんですけどね」
そう言ってくれる沙織に戸惑うことなく
「クククッ、俺も好きだよ」
と、答えられる。