拗らせ女子に 王子様の口づけを
23時40分。
時間的にもそろそろお開きの時間。
会話の途切れた隙を狙って、突発的に声を出した。
「あ、あの!」
ん?と二人から視線を集め、私の言葉を待つ二人に向かって勢いのまま言葉を繋げる。
膝の上で握りしめた手に汗で湿るのが分かった。
「あ、あのね。あと少しだけ奏ちゃんと一緒に居たいんだけど、ここじゃなくてもいいからお店を出たら一緒に過ごせないかな?」
奏ちゃんに照準を会わせ、目をジッと見つめた。
ふわりと笑った奏ちゃんが私の頭を撫でながら優しい声を出す。
「ん?どうした?ああ、でも時間もけっこうたってるな。そろそろ帰るか」
「う、うん。いいの?」
「ん?ちゃんと送るから。まだ一緒にいれるぞ?」
「っ、ちがっそうじゃなくて……」
「今日はもう遅いから。又ゆっくりメシ行こうな」
「で、でも今日は誕生日だから、」
「誕生日は来年もあるだろ?」
「奏ちゃんと、一緒にいたい……」
「ククク。一緒にいるじゃないか」
「っ、」
段々と小さくなる声と俯いてしまう顔。
目の奥がツン、と熱くなる。
黙って私たちのやり取りを見ていてくれた秦野さんが、少しの沈黙をも見守って、ため息をついた。
「……奏輔。それは本当に言ってるの?女の子に……ごめんなさいね。女の子、じゃ失礼ね。……女にここまで言わせるの?」
「梨花?何の事だ?」
心底分かっていない惚けた顔で奏ちゃんは聞き返す。
私はゆっくりと顔をあげて、秦野さんを見た。目尻に力をいれているせいで睨んでいるように見えたかもしれない。
「……っ、秦野さん。ありがとうございます。も、もういいんです」
「沙織?」