知らない彼が襲いにきます
幼い頃から父も母も仕事で忙しく、何かと家を空ける機会が多かったため、必然的に話し相手は彼になる。


そのため、暇な時間ができると私はしょっちゅう彼を呼びつけて気の向くままにお喋りをしたものだが、嬉しいことも悲しいことも、私の話は全て嫌な顔一つせず聞いてくれた。


あるときは励まし、あるときは叱り、またある時は一緒になって喜んでくれた、そんな彼に私が恋心を抱始めたのはいつからだっただろう。


身分は違えど、想い続けていればいつの日かこの恋は叶うはずだ、私はそう思っていた。


しかし、私が十二歳になったその日、彼は突然この屋敷から姿を消してしまったのだ。


父の話では、自ら望んで辞職したのだという。
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