知らない彼が襲いにきます
令嬢の嫁入りの準備ともなれば、相手方に挨拶をしたり来賓の予定を調整したりで数カ月はかかるのがこの地方では当たり前だが、一日でも早く金を手に入れたかったのだろう、父はわずか一週間ですべての手配を終えてしまった。


その一週間の間、私はずっと部屋に引きこもりっきりだった。


淫魔と関係を持ってしまって以来、エヴァンのことはきっぱりと諦めたつもりだったが、やはり心のどこかで彼に会いたいと思っている部分があったのだろう。


しかし結婚してしまえば、今度こそ本当の本当に、彼には会えなくなってしまう。



――エヴァンには、もう二度と会えない。



その現実を飲み込んだとたん、私の世界からは色が消えてしまった。


部屋の窓を開けた時に見えるあの景色も、以前のように鮮やかには映らない。



そんな私の心中を察してか、さすがの父もそれ以上雑用をやれとは言わなくなった。
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