夜明け前に灯を
あの丘に逃げて

だから行動を起こそう!なんて自分を変えれる訳もなく、やっぱりなにもできずに卒業式の前日はやってきたのだった。
別に中学校で思い出深いこともあった訳じゃないし、学校を卒業することに感慨深くなっている訳じゃない。
ただ、明を毎日見ることができなくなるのが……。
「なーにやってんの、優星くんっ。」
「あ、明……。なんでここに?」
だって私この丘好きだもんと、明は僕の気持ちなんてまるで知らないようにおどけて隣に座る。
明日で卒業だね、そうだな、と他愛もない言葉の繰り返し。
特に浸る思い出もないから当然か。
その空気を割くかのように、明が突然ふぅっと深呼吸をして、なにやら姿勢を正す。
そして、語り出したのだ。
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