愛は尊い



行こう、と
楓さんは店の外へと出て行ってしまった


『あ、えっ?待って、』



だってお会計だってしていない
それにさっきまで着ていた私の服は?
どうしていいかわからず
ただオロオロしていたら
店員さんがクスッと笑い


「こちらで責任を持って送らせていただきますので、早く追いかけないと…彼女、見失ってしまいますよ?」


ハッとし、外に出て行ってしまった楓さんを探すが、もう既にいない
店員さんにお礼を伝え急いで外へ出た



どっちの方向へ行ったのかもわからず
辺りをキョロキョロと見回す
…が、いない


どこに行ったんだろ、と辺りを探そうと歩き出した時


「へぇ、化けるもんだな」


聞き覚えのある声に振り返れば
今日初めて会う黒崎さんだ
相変わらず黒のスーツ姿で
いかにも、という黒のセダンに
背中を預けていた


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