楽園
最終章 楽園
華はあまりに悲しくて仕事にも行けなかった。

食事も摂らず生きているのも辛かった。

このままこの世から居なくなろうかと思ったとき
お腹を空かせたミミが鳴いたのだ。

「いけない…ミミにご飯をあげなくちゃ…」

華はそれで思い止まった。

ミミを残しては逝けないと思ったのだ。

華はミミに救われ正気を取り戻した。

ミミのために生きなければいけないと思って
心を入れかえた。

それから華は頑張って生きた。

結局翔琉には逢わないままだった

翔琉は華が一人で居るとも知らずに暫く日本に滞在した後、
再びニューヨークでの仕事があって戻ってしまった。



そしてまた半年が過ぎた。



広島に帰った健太郎に珍しい客が来ていた。

「クルミ…どうして来たんだ?」

「お店に引っ越しの葉書くれたでしょ?

実はあのお店はもう辞めたの。

一緒に働いてた子が後から持ってきてくれて…来るのがおそくなっちゃった。

秋島さん、ずっと来ないと思ってたら…こんなことに…」

クルミは健太郎の姿にショックを受けていた。

車椅子に座り思うように動かなくなった健太郎の脚をクルミは擦った。

「クルミはいつも俺を元気にしてくれるな。」

「秋島さん、アタシのホントの名前は宮下玖未っていうの。クルミじゃなくてクミよ。

よろしくね。」

そして玖未は健太郎にキスをした。

「これはクルミのサービスじゃなくてクミの気持ちよ。」

健太郎には新たに玖未という力強い味方が出来た。

その後、何年かして健太郎は玖未と結婚した。



そして…華は…


ある日曜の朝、やけに隣がうるさかった。

華は半分寝ぼけながらコーヒーを淹れて
眠気を覚ます。

「もう10時か…ミミ、ご飯にしよう。」

華がキャットフードをお皿に入れていると
インターフォンが鳴った。

「はーい。」

華がカメラを見てビックリきた。

翔琉がドアの外にいる。

華がドアを開けると
翔琉が立っていた。

「隣に越してきた海藤と言います。
宜しくお願いします。」

翔琉はあの時と同じ菓子折りを持ってやって来た。

「翔琉…」

「また華の隣に住むことにしたんだ。

華、最初からやり直そう。」

「どうしてここが?」

「秋島さんから連絡を貰ったんだ。
華をよろしくって。

華があの日、空港に来なかった理由がやっとわかった。

どうして話してくれなかったんだ?」

「…ごめんなさい。
話したら翔琉はまた自分を責めると思ったの。」

「そうだな。そうだったかも…

でも…俺は華と居ないとダメなんだ。

華がいなきゃ幸せにはなれない。

それがわかったからここに来た。」

翔琉は華を抱きしめた。

「華…ずっと愛してる。

昔も今もずっと華だけを愛してる。」

翔琉は華にキスをした。

「アタシもずっと翔琉を愛してた。
翔琉と居るときだけが幸せなの。

翔琉はアタシの楽園だった。」

そして二人はまた昔のようにお互いの家を行ったり来たりして暮らすようになり…

いつしか華の部屋に翔琉も住むようになり…
翔琉の部屋はアトリエになった。

相変わらず翔琉の描く女は華だった。

絵の中の華はいつも妖艶で華がある。

なぜなら翔琉といるときの華はいつもそうだから。




The end




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