クールな御曹司と愛され政略結婚
「こんなにいらないよ」

「要子の分も入ってる。たまにはおごられろよ」

「それなら足りないよ」

「どれだけ飲む気だよ」



煙草を挟んだ手を口に当てて、姉は目だけで微笑んだ。



「唯子」



思わず、「はい」と生徒みたいな返事をしてしまった。



「灯は、唯子にまで隠す気はないと、あらかじめ言ってきていたよ」

「え…」

「もう少し信じてあげることだね」



見透かされた恥ずかしさが、私をかっとさせた。



「お姉ちゃんにそんなこと言われたくない」

「唯、やめろ、帰るぞ、もう」



灯に両腕をつかまれて、押し戻される。

姉は悠然とスツールの上で脚を組んだまま、煙草の煙を吐き出した。



「来てくれてありがとう、灯」

「…話があったんだろ」

「いいんだ、ただ、四年分のよもやま話をしたかっただけだから」

「次会うとき、聞くよ」

「そんな機会があればね」



そう言ってから、私に向けて、にっこりと微笑む。



「唯子も。会えて嬉しかったよ」


< 100 / 191 >

この作品をシェア

pagetop