クールな御曹司と愛され政略結婚
「灯がなにを言っても納得しないくせに、それでも言わせるのは、灯がかわいそうだよ」

「お姉ちゃんに…」

「関係ない? ほんとにそうか?」



ゆっくりと近づいてきた姉は、しなだれかかるように灯の肩に手を載せた。

私より5センチは背の高い姉がそうすると、灯の容姿と絵のように釣り合う。



「過去の話だよ、目をつむってやれ」

「つむりたいけど、できないから、はっきり聞きたいの」

「私は灯と寝たよ、灯以外ともたくさん寝たけど」



吐きそうになった。

知っていた。

知っていたけれど。



「だけどもう、10年以上も前の話だよ、そんなので責めないでやってくれ」

「責める気なんてないよ」

「だったら聞かずに済ませてやればよかったじゃないか」

「知る権利くらいある」

「自虐につきあわされて、灯も気の毒だ」



かっと顔に血が上るのがわかった。

姉の言う通りだ。

いつだって、姉の言う通りなのだ。



「要子、もうやめろ」

「言ったろ、好きな子は泣かせたいんだよ」



灯が肩から姉の手を振り落とし、厳しい声を出した。

姉は意に介さず、真っ白な美しい肌を淡く光らせて笑っている。



「俺も言ったろ、要子のそれは、たちが悪い」

「いい男になったなあ。怒るとますます男前だね」

「まじめに聞け」

「私の辞書にまじめって言葉は、載ってはいたんだけど消しちゃったんだ」
< 103 / 191 >

この作品をシェア

pagetop