クールな御曹司と愛され政略結婚
悪びれない姉に、灯があきらめの息をついた。



「俺たちはもう帰る。要子もほどほどにしろよ」

「ご心配ありがとう。私のほうが心配してるよ。このまま帰って、私のかわいい妹と弟は、果たして夫婦として、寄り添って生活できるのかなあってね」



ぎくっとした。

自分の吐息が、かすかに震えだすのがわかる。



「ねえ唯子」



叱られることがわかっている子供みたいに、呼ばれたのに視線すら上げられなかった。

姉の声はいつも、どこか楽しんでいるように響く。



「灯と結婚したのは、私と張り合うためじゃないよね?」



心が悲鳴をあげた。


──まさか!

まさか、違う、違う。


私はずっと、灯のことが好きだった。

だからしたの。

灯が欲しかったからしたの。


姉の隣で、灯がこちらを見ている。

そんなまさか、という怪訝そうな目つきが、私の視線とぶつかると、愕然とした表情に変わった。


違う、違うよ灯。

絶対に違う。

なら、どうして声に出して言えないんだろう。



「…わ、私」

「別に、昔の関係なんてもう忘れたし、蒸し返す気もさらさらなかったけどね」



姉が再び、灯の肩に手を載せた。

そこに頬を寄りかからせて、私に目を細めてみせる。



「唯子が灯を大事にしてあげていないんなら、私がもらう」
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