クールな御曹司と愛され政略結婚
「…灯」



口の中で呼んだ。



「灯」



振り向いても、背中は動かない。



「灯!」

「うわっ」



飛びつくと、灯が声をあげて、ぱっとこちらを向いた。



「びっくりした、なんだ、起こしたか?」

「今話していい? 灯のこととか、お姉ちゃんのこととか、話したら聞いてくれる?」

「え?」

「聞いたら、話してくれる?」

「なんだいきなり、おい」



まだ暗い室内に目が慣れていないんだろう、灯は私ほどには視界が効かないらしくて、顔をのぞき込もうと私のほうに身体を寄せてくる。

その目が見開かれた。



「泣いてるのか」

「私、灯と結婚できるってわかったとき嬉しかった。こんなこと、実際に起こるなんて思ってなかった。ほんとに嬉しかったの」



詰め寄ってまくしたてる私に、灯は圧されて、ぽかんとしている。



「でもお姉ちゃんに負けたくないって気持ちもあった。勝ちたくて結婚したわけじゃないけど、これで負けることはなくなったかもって、確かに思ってた」



こぼれる涙を、手の甲で拭う。
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