クールな御曹司と愛され政略結婚
「別にいいって思ってたの。灯が誰を好きでも、結婚するのは私なんだからって。でもだんだん、わからなくなってきちゃって」

「え、ちょっと待って」

「これでよかったんだっけって不安になっちゃって、なんで結婚したんだろうとか、そもそも結婚したからって、なにが手に入る気でいたんだろうとか」

「唯、なあ」

「でもね、お姉ちゃんが言ってた、あれは違う。違うって言いきれるから。あれからすごく考えたの、でも絶対違う。張り合う目的なんかで、私、灯を縛ったりしないよ。それだけは知ってて」

「唯!」



肩を揺すられて、我に返った。

いつの間にかベッドサイドのランプがついて、私たちのまわりだけが、淡いオレンジに染まっている。

私は気持ちが高ぶったあまり、ひっくひっくと子供みたいに喉を鳴らして、涙をぼろぼろこぼして鼻をすすっていた。

そりゃ、灯だって途方に暮れた顔にもなる。



「…灯といたいの」

「俺もだよ」

「そういうんじゃなくて」

「そういうってどういうのだよ、あのなあ」



引き寄せられて、ぎゅっと抱きしめられた。

裸の灯の肌は熱くて、ボディソープの香りがする。



「俺は別に、お前が要子と張り合って結婚したんだとしても、かまわないよ」

「張り合ってないってば!」

「たとえだ、たとえ」



動物をなだめるみたいに、がっちり抱いてどうどうと背中を叩く。



「俺も考えたよ。でも結局、どうでもいいなと思ったよ。唯がどんなことを考えて結婚て結論にたどり着いたかとか、正直、俺は気にしてない。唯にも、自分が考えたことを気にしてほしくない」

「…そうなの?」

「こうやって一緒にいられれば、俺はいいよ」



腕の中で、優しい瞳にのぞき込まれる。
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