クールな御曹司と愛され政略結婚
「でも、あの、お姉ちゃんとしてたんでしょ、その」

「ものすごく一時期な。それもお互い高校のときだ」

「あれ、でもその後にも、仲いいときあったよね…」



なんだろう、この不安。

コンクリートでできた頑健な基礎と信じていたものが、実は砂山だったと気がついてしまったような。

不思議な心理で、こうなったら絶対に姉への想いを認めさせないと済まないような気がしてきた。



「いつの話だ?」

「灯が大学一年のころ。私そのとき、つきあってるのって聞いたよね?」

「俺、そうだって答えたか?」

「どうだろうなって濁してたけど…」



じろりと目が動いて、私を見た。

はい、はっきりとした肯定はいただいておりませんでした。

でも、でもね。



「否定もしなかったじゃない…」

「で、俺がずっと要子のことを好きだと思ってたわけか?」

「うんまあ、その後、ほかに彼女を作ってるのも知ってたけど、心の底では、ずっと引きずってるのかなとか」



ついに灯は私の手を離し、両手で顔を覆ってうなだれてしまった。

「マジかよ」と手の向こうからつぶやき声がする。



「あの…」

「お前のために言っといてやると、100パーセント間違いってわけではない。確かに昔は、そう思ってたときもあった、本人含め、別に誰にも言わなかったけど」

「だよね、だよね?」



なんでそれが私のためなのと思わなくもなかったけれど、実際私はほっとして、もう自分の心理がよくわからない。



「でもほんのガキのころの話だ。小学校とか中学校とか。当時あいつは俺にとって、一番身近な女子だったから。わかるだろ、そういうの」

「まあ、わかる」
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