クールな御曹司と愛され政略結婚
姿見で全身を整える。
胸元のペンダントが、ライトに反射する。
こんな慌ただしい日々を、ゆっくり重ねていくんだよね、私たち。
ずっと並んで歩こうね。
あの日、誓ったみたいに。
「ごめん、お待たせ」
「いや」
玄関で待っていてくれた灯と、一緒に家を出る。
世間は寝静まる直前の、ひっそりとした安らかさに満ちている。
動いているのは、私と灯と、エレベーターだけ。
乗り込む寸前、ふとまたお互い、吸い寄せられるようにキスをした。
間近にある瞳が、優しすぎてくすぐったくなる。
私の灯。
「差し入れ買ってってあげようかな」
「この分だと徹夜だしな」
「北欧旅行、いつになるかなあ」
「気長に行こうぜ」
灯が笑い、自然な仕草で私の手を取った。
そうだね、急ぐ必要なんて、まったくない。
なんせ、命の火のある限り、私たちは離れられないんだから。
温かな手を握り返した。
灯の指にはまった指輪の、確かな堅さを指先に感じた。
不安に揺れることは、きっともうない。
信じたいのに信じられず、泣くことももうない。
灯さえ隣にいてくれたら、私はなにも怖くないの。
大事な人たちと刺激的な仕事と、愛しいこまごまとした日常に囲まれて、ありのままの自分でいられるの。
だって、灯が教えてくれるから。
愛ならここにあるって。
Fin.
──Thank you!

