クールな御曹司と愛され政略結婚
灯の言いたいことはわかる。

平常時でも忙しいのに、この半年ほどは特に仕事のスケジュールが過密で、やれ式のオプション決定だ、披露宴の企画だと打ち合わせに時間を割くのは、実際のところ、なかなか厳しい。

でも片方だけ行って済ますのも味気がないので、やるからにはと、ふたりで参加することにしている。



「面白いけどな、なじみのない業界で」

「一生知らずに済むよりはね」

「おふたりともドライだなあ」



菅原くんが笑った。



「さすが政略結婚ですね」

「それはイコール、愛がないって意味じゃないからな」

「プライベートだと、どっちがボスなんですか?」

「照明さんが呼んでるよ」



見せつけるように、わざとらしく肩を抱き寄せた灯の腕を払いのけて、菅原くんの後ろを指さした。

振り返った彼が、「やべ」とすっ飛んでいく。

灯は一転してふざけた気配を消し、私のほうを見た。



「このまま俺も移動して、撮影に立ち会う。お前は戻って、明日のトレーラーの打ち合わせに出てくれないか」

「了解」

「打ち合わせの場で必ず決めてきてほしいことがあるんだ、判断は任す。それについて話すから」



言いながらアイデアやメモなどを書き留めている、方眼のノートを取り出す。

私も色違いのノートをバッグから出し、聞く準備を整えた。


私の今の仕事は、灯のアシスタントだ。

肩書は灯と同じ"プロデューサー"であり、いわゆるお手伝いさん的な意味のアシスタントとも少し違ったりする。

必要があれば灯の代理もする、いわばサブプロデューサーとでもいう立場にあり、灯はそんな私を実にうまく活用し、多数の優れた作品を生み出している。

最近は、灯を名指ししてくるクライアントも増えた。
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