クールな御曹司と愛され政略結婚
──灯のほうが、私よりよっぽど複雑な立場にある。

なんたって現役の社長の息子なのだ。

不本意に媚びられることも、不当に反発されることもあるだろう。

けれど灯はいつだって、驚くほど自然体で、私はそれに憧れる。


自分への信頼に満ちていて、自負を隠しもしないくせに、嫌みなところも攻撃的なところもなくて、上を立てて下を守って、だからみんなに愛されている。

灯と絡んだことのあるスタッフは、誰もが彼のファンになる。


そんな灯からは、周囲の視線ばかり気にして固くなっていた私は、なんとかしてやらなきゃいけない存在に見えたに違いない。

灯らしい優しさに救われて、きっと私は徐々に変わっていて、それと同時に、周囲の私を見る目も、変化していた。


──『そうか』って、なんか笑ってました。


まさに"仕上げ"だったのだ。

この結婚で、私は完璧に半分"ビーコンの人間"になったのだから。

狙ったわけはないだろうけど、その影響が望んだ方向に出ているのを確認できて、灯もきっと、安心したのだ。


急速に暗くなっていく中、口元を少し微笑ませている横顔を盗み見た。

かなわないし、あきれる。

いったいどれだけ私を愛しているのか、この男は。





「記念写真撮りまーす」



機材があらかた片付いたところで、木場くんが全員を呼び集めた。

広い草地に散らばっていたクルーが手を止めてわらわらと集合すると、びっくりするほどの人数になる。


木場くんのそばに立って並びやバランスを確認していたら、「真ん中にどうぞ」と灯が吉岡さんを呼ぶのを見た。

彼女と女優さんを中央に並べて、灯自身は端に移動しようとしたのを、吉岡さんが腕を絡めて引き留める。

続いてなにか耳打ちされると、灯は困ったように笑ってからうなずき、最前列のその場に留まって、横と同じように片膝をついた。



「全体的にきゅっと寄れますかー。佐鳥さんも入ってください」

「うん」



集団のほうに駆けていき、前列の端っこにうずくまる。

フラッシュが焚かれた瞬間、自分が笑えていたか、自信がなかった。



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