クールな御曹司と愛され政略結婚
「灯、すぐ気づいた?」

「たぶん、ちょっとしてから」

「…気づいて、どうした?」

「写真を撮った」

「え!」

「というのは嘘で」



ああ、よかった…。

胸をなでおろしながら部屋を出る。



「普通に、俺も寝ようとした」

「だよね」

「というのも嘘で」

「なんなの?」

「しばらくいじって遊んでた」



振り向くと、一段上にいる灯が、にやっと笑って見返してくる。



「…また嘘?」

「これは本当。寝てても反応ってあるもんなんだな」

「嘘だよそんなの」

「本当だって。弱点も見つけた」



なんのことよ、とまた後ろを振り仰ごうとしたとき、着ていたブラウスの襟口をくいと引っ張られた。

あらわになったうなじの下の左寄り、肩とも背中ともいえるあたりに、温かい、濡れた感触がぞろりと這う。

気づいたときには階段の一番下にくずおれていた。



「今のすごい音、なあに!」



すっ飛んできた母が、床の上の私を見て血相を変える。

お尻やら腰やらをめちゃくちゃに打ったらしく、全身がずきずき痛む。



「大丈夫か、唯」



駆け下りてきた灯の手を借りて、なんとか立ち上がった。



「どこ打った?」

「もう、あちこち…」

「なにやってるのよ唯子、もう」

「ごめん、俺がふざけたんだ」
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