【短編集】その玉手箱は食べれません


「大丈夫、私に全てを委ねて」

 元カノは甘ったるい声を出したあと、卑屈な笑いを残した。


「おまえなんかと結婚できるかぁー!」


「ずいぶん怒りっぽいのね。きっとお腹が減ってるから腹が立つのよ」

 元カノは地下室の隅にあったエコバックから菓子パン類やおにぎりを出しておれに渡した。


 我慢できたのは数時間。


 恐ろしく空腹なのに驚く。


 おれはここにどれくらいの時間閉じ込められていたのだろう?


 おにぎりにかぶりついた。


 しかし、おにぎりはすぐにおれの手から滑り落ちていく。


「ひ、卑怯者……」

 おれは痺れる体に耐え切れず倒れてしまった。

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