思い出す方法を教えてよ
夏樹に色々なことを話したけど、記憶が戻る気配はなかった。

「理央はまた夏樹と付き合いたいの?」

藍がそんなことを言いだしたから、私は驚いた。当たり前じゃないか。しかも、「また」ってなんだろう。私は夏樹と別れたわけじゃないのに。

「私と夏樹は別れてないよ」
「……そっか、そうだね」
「記憶が戻らなくても、これからまた一緒に過ごしたい」

夏樹は夏樹のままだ。正直、記憶が一生戻らなかったらと思うと怖くて仕方がない。でも、その可能性だってあるのだ。
もし記憶が戻らなかったら、元の関係には戻れないかもしれない。無理して埋めようとしても、10年以上かけて築いた関係には戻れない気がする。
それでも、私は夏樹が好きだ。

「藍はどうすればいいと思う?」
「漫画だと同じ状況を再現すると、元に戻ったりするけどね」
「階段を踏み外すのは危ないよ。下手すると大怪我だよ」
「だよね」

そんな危険なことはしたくない。怪我も心配だけど、更に状況が悪くなったら大変だ。私まで記憶を失ったり、夏樹が他の記憶も失ったり……想像するだけで怖い。

「好きだから、ずっと待つよ」

思い出してくれるまで待つ。でも、途中で夏樹が他の女の子を好きになってしまったら?
私には止める権利があるんだろうか。夏樹の気持ちを尊重するなら、諦めるべきなんだろうな。だって夏樹は私と付き合っていたことを覚えていない。
そんなことになっても、私は夏樹のそばにいられる?自信はなかった。
私は夏樹のことが好きで、幼馴染という関係だけじゃ嫌だったんだから。

「そっか、うん」

藍はやっぱり困った顔で頷いた。藍が何かを隠している気がして気になったけど、聞いても何でもないと言われるだけだろう。
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