CLUSH HONEY~V系彼氏と、蜜より甘く~
真夜中近くの、人気のない公園に彼は重たげな足取りで入っていって、

街灯の点るベンチの下に、肩を落とすようにして座った。


そのただならない様子に、彼の横に寄り添うように腰を下ろして、

「何か…あったの?」と、聞く。


キリトからは、いつもの近寄りがたいような雰囲気は微塵も感じられず、

ただ寂しげで、哀しそうにも見える感じがまとわりついていた。


「…悪い。急に呼び出したりして…」


顔も上げないままで、キリトが言う。


「……あんたしか、思いつかなかったから…」


「うん…」と、うなづく。キリトが、そんな風に自分を思い出してくれたことが、少なからず嬉しかった。


間をあけて、彼の口から、

「俺、もうバンドを……」

と、声が絞り出された。


「バンドが…どうしたの…?」

そう促すと、


「うん…」と、小さく彼はうなづいて、



「……俺…もう、バンドをやめたいんだ…」


と、告げた。


彼の急な告白に、戸惑いを隠せなかった。

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