恋の処方箋SOS
「私まだあなたのこと信用したわけじゃありませんから」
「まあまあそう言わず、どうせ帰りのタクシー代もないでしょ」
人をバカにした言い方のまま白石先生はグイグイと手を引いていく
「あのちょっと待って」
あれよあれよという間に裏口から外に出ていた
「ちょっと待っててくださいね」
そういうと白石先生は駐車場の方に歩き出していた
まさか車?朝は電車だったよね確か
次に白石先生が戻って来たときは真っ赤なポルシェに乗っていた
「ウソ・・・」
「あれ?驚きました?」
いや普通に驚きましたけど、私は言葉を飲み込んで開かれた助手席のドアから乗り込んだ
車内にはクラシックが静かに流れるおちつく空間になっていた
「クラシックですか」
「お嫌いですか?精神的におちつきません?
エアコン寒いですか?」
「あっまあ」
龍太郎なんかより気配りができていて大人な感じがする
「車が小さいからすぐに効いちゃうんですよねエアコン
龍太郎先生のバカでかい車と違いますからね」
白石先生は笑いながらギアを切り替えた
「あのどちらに?」
「杏子さん僕に行き先を告げてくれました?」
私はすっかり忘れていて声をあげた
「あっすっかり忘れてました」
「なんだったら少し呑みません?」
私はなぜか断りきれずに頷いてしまった
「はい少しなら」
「それと明日は時間あります?会わせたい人がいるんです」
「会わせたい人?」
「真幌です」
「死んだんじゃ・・・」
「やだなぁそれじゃあまるで僕が人殺しみたいじゃないですか
確かに真幌は死にましたよ心がね
だから僕は精神科医になったんじゃないですか」
そうこうしているうちに車は寂れたアパートの前で停まった
「えっと」
「見た目はこんなんですが住めば都ですよ?車おいてきますね」
私を降ろしてから白石先生は近くの駐車場に停めに行ってしまった
ふと携帯が気になり確認するとメールがはいっていた
龍太郎から差し入れありがとうのメール
返信しようとしていたら白石先生が戻って来たので慌てて鞄にしまいこんだ
「一階の端ですうち」
105号室の鍵を開け中に通されると中は驚くほどキレイだった
「キレイですね」
「そうですか?適当に座ってください
ビールでいいですか?」
白石先生は冷蔵庫から缶ビールを2つ取り出して1つを私に手渡してくれた
「ありがとうございます」
「はい乾杯」
缶をあわせて一口飲むおいしい
ビールってこんなにおいしいんだと改めて思う
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