恋の処方箋SOS
05
「龍太郎先生とはうまくいっていますか?」
私は下を向いて俯いて首をふった
「現実はいつもうまくいかないですね」
「まあそうでしょうね」
白石先生は意外にも豪快に呑みながらメガネを外した
私は白石先生の横顔から視線をはずせないでいた
「白石先生はメガネをかけないほうがいいですよ」
「手が届かないからといって鞍替えなんてみっともないですよ?まあ僕はキライじゃないですが」
二人で床に座りベッドを背にしていたが白石先生が缶ビールを飲み干してそのまま私の口を塞いだ
長いようで短いキス、永遠のようなキスだった
「白石・・・先生?」
「いい加減その白石先生ってやめてくれない?
僕は啓です白石啓」
「啓」
「よくできました」
目を細めて2どめのキスは先ほどより優しく強かった
そんな甘いムードをうち壊す着信音もちろん相手は龍太郎
「ウソ・・・」
「どうしました?龍太郎先生ですか?いいじゃないですかキスしましょう」
通話ボタンを細い指で押してわざと音をたててキスをする
私は焦りながら通話を切ろうとするが白石先生が携帯をとりあげてしまう
「あっ・・・」
その声は自分でも逆効果なのはわかった
勝ち誇った意地悪な白石先生は笑っていた
「悪い邪魔したな」
「龍太郎、待って」
「ずいぶん大胆になったなおまえ、俺も遊びか?」
「違うの」
ガシャンと龍太郎がなにかを割り通話が切れた
「あーあ怒らせちゃいましたね」
「最低」
「あなたがね」
龍太郎に謝らなきゃ私は鞄に携帯を詰め込んで一度、外に出て折り返したがつながらない
しばらくして龍太郎からかかってきた
「龍太郎」
「いまどこだ?」
言えるわけがなかった、だって言ったら龍太郎は怒って仕事を放り投げて来てしまうから
「言わない」
「おまえどこまで俺を怒らすつもりだ?牽き殺されたいのか?」
眩しいと思ったのも束の間、低い重低音なエンジン音が鳴り響いた
ヘッドライトを一段おとした確かアメリカの車の白のマスタングが目の前に停まった
運転席からはやはり龍太郎が降りてきた
「いつもと車違うね」
「はぐらかしてんじゃねぇよ?」
「あっうんごめん」
「ごめん?誰に口きいてんだおまえ」
あまりの怖さに後ろに下がろうとして尻餅をついた
「ごめんなさい」
「いいから車乗れ」
「イヤ、今の龍太郎が怖いから」
「はあ?怒らせてんのはおまえだろ」
車の窓ガラスが割れるんじゃないかというくらい拳を叩きつける
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