黒胡椒もお砂糖も
「・・・マザコンとか」
「知らない」
「・・・上に4人くらい口うるさい姉がいるとか」
「知らないってば」
「30歳過ぎてマトモな独身男、しかもエリートは残ってないと思うべきなのよ!この人にも何かあるはずよ!妻が居なかった何か原因が!」
どうしても変態か変人にしたいらしい。
とにかく!と最後には机を叩いて天井を睨みつけていた。
「この人にうんと言うのよ、美香!逃してはならない。こんな美形だったら多少変でも目をつぶれるってもんだろうし!」
「・・・外見優先なわけね」
キッと振り返って陶子はまくし立てる。目の淵が赤くなっているのは興奮からか、ようやく酒がまわってきたかのどっちだろうか。
「違うの!さっさと誠二のバカたれなんて忘れて前に進みなさいって言ってるの!この彼がその出発点になるのであれば、私は全力で応援するわよ」
・・・うーん、優しさから言ってるってことは、ちゃんと判ってますよー。私は女友達を見て微笑む。すると彼女はまた瞳を潤ませながら、小さな声で言った。
「幸せになって欲しいのよ。早く過去から自由になって、美香。皆で心配してるんだから・・・」
陶子が私に何か隠しているのははっきりしていた。だけれども、心優しい女友達は私のことを思って話さないと決めているようだったから、触らずにいたのだ。
せっかく、その話題は二人で避けていたのだ。
なのに、別の形でそれを知ることになってしまった私だった。