オフィスの野獣と巻き込まれOL


しまった。やられた。


課長に対する感情なんて。
ずっと言わないでいたのに。


課長とのことは、余りにも悲惨な事だったから、正直に言えないでいたのに。

亜美の作戦に乗ってしまった……


よく考えれば、亜美が不機嫌になるのはおかしい。

普段から亜美は、観音様みたいに笑ってる。

それで、何の害もないと思ってしゃべると、言わなくてもいいことまでしゃべってしまう。

しゃべってしまってから、思わぬ時に優しい言葉が返ってくる。

亜美は、驚くほど人に痛みに敏感で、こんなふうにタイミングよく人の痛みをほじくり出す。


笑ってるのに。そこを突いてくるか。

亜美、人の痛みをえぐるなって。

放っておいてお願い。

止めてよ……

もうダメ。涙腺緩んできた。


「課長と何かあったのね?」

「課長って、堀川課長のこと?
何もないよ。ある訳ないじゃん」

亜美は、うん、うんと観音様みたいに頷く。

「付き合ってないよ。課長とは、何ともないから」

「美帆、何ともないなら、どうして課長のこと『キモ』って呼ぶの?
美帆ってさあ、それほど強い思いをもってない人には、絶対に酷いあだ名で呼んだりしないでしょう?」

「亜美のバカ……放っておいてよ」

「ほらごらん。意地はったりして。すんなり話してくれればいいのに」

「話せるわけないじゃない。
いいように遊ばれて、捨てられただなんて」
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