オフィスの野獣と巻き込まれOL
「目が覚めるように、濃く入れましたから」
同じコーヒーを自分にも入れた。
彼に何かしてあげることが、こんなにも嬉しいと感じてしまう。
そんな自分を戒めるためにも、コーヒーの苦みで目を覚まそうと思った。
「ありがとう。いい匂いだ」
そう言って笑ってくれる課長の顔が、旅行の前とは違う気がする。
自惚れかもしれないけど、笑いかけてくれる表情の一つ一つに意味がある気がするのだ。
彼は前とは違って、ときどきこうして、仕事の顔とは違う優しい顔を見せてくれるようになった。
私も微笑んで、「どういたしまして」と返した。
そのまま席に戻ろうとすると、課長に引き留められた。
「美帆、ちょっと待って」と腕を取られて立ち止まる。
「なんですか?」
課長が私を引き寄せる。
「先に寝ないで待ってろよ」
耳打うちして、すっと腰に手を回した。
「はい。ちゃんと起きてます」
「じゃあな。上に行ってくる」彼は指で示して言う。
「行ってらっしゃい」
「なるべく早く帰るよ」
キスはなかったけど、去り際に肩をぎゅっと抱かれた。