オフィスの野獣と巻き込まれOL

あの夜のことは、幻じゃなかった。

「今日も、遅くなるけど、そっちに行くよ」

課長が,私に寄り掛かるようにしている。

出張から帰って来て、課長は狭い私の家にやって来るようになった。

彼が部屋に来ても、時間のない私たちは、食事をして一緒に眠る。

ただ、それだけなんだけど。

一緒に過ごす時間が長くなると、相手を前より身近に感じる。


二人きりになると、彼は普通の恋人同士だった。

信じられないことに彼は、眠るとき、少しでも離れると安心できないのだ。

私がベッドの端に移動しようとすると、
『どこにも行くな、ここに居ろ』と、すぐに引き戻す程に甘えた恋人なのだ。


「二人とも幸せなのはわかったから。
いい加減に、仕事しろよ」山科君が、私たちに向かって言う。

課長の声は、小さくても低くて良く通る。

「えっと、飲み物でも入れてきますね」

山科君に咎められて、席を立った。

感情が高ぶっている。

課長のそばにいるだけで、幸せだと思う。

私は、二人分のカップにコーヒーを濃い目に入れて出した。

ここぞと言うときに、奥にしまってあった豆を取り出してきてお湯を注いだ。
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