オフィスの野獣と巻き込まれOL

質疑応答が終わった。

特に答えに困るほどの意地悪な質問もなく、新社長はよどみなく応えていった。

本当に、なんてすごい人なんだろう。


近くに寄ろうにも彼との距離は遠すぎてダメだった。

彼の周りには武子夫人の他、会社の関係者がたくさんいて、近づける状態ではなかった。

彼がきびきびと質問に答える姿は、惚れ惚れするほど堂々としている。

すでに社長としての風格が備わっている。

あの人は誰だろう。

ぶかっとした野暮ったいスーツで、私の目の前に現れた課長はどこに行ってしまったのだろう。


カッコいいスーツに身にまとった彼は、私にとってまるで見知らぬ人だ。

見たこともないような、赤の他人に思える。



私は、課長に声をかけるのを諦めて、山科君に言った。


「ごめん。疲れちゃった。これまで忙しかったから休んでもいいかな」

「ああ、もちろん。構わないけど。

課長、俺たちとも話したいと思ってるよ。ここで待ってない?」

「ここにいても、いつになるのか分からないよ」

彼はいろんな人に捕まていて、こっちを向く素振りも見せない。

< 286 / 349 >

この作品をシェア

pagetop