オフィスの野獣と巻き込まれOL
思わず「はっ」と息を飲みこんでしまうぐらい立派な木でできた門。
門に瓦の屋根まで付いてる。
クリーム色の塀が、屋敷をぐるっと囲っている。
こういうお宅を通り過ぎるとき、重要文化財を見るように立ち止まってしまう。
すっかり見入っていると、見かねて祐一さんが呼びに来た。
私の目の前に立って、顔をのぞき込んでいる。
「どうしたの?さあ、中に入って」と背中に腕を回して、そっと促してくれる。
どうしたの?と言われても。
どうして、私、綿貫家に呼ばれてるのかな?
そんなこと聞く間もなく、彼に背中を押されて玄関口まで押し出された。
普通の家と違って、数歩で玄関までたどり着くことはない。
門から玄関口まで歩く間も、訪れる人の視線が灯篭や岩に向くように、計算したて置かれている。
低く整えられた庭木も素晴らしかった。
私は、タイルでできた道をカツカツと音を立てて歩いていく。
祐一さんが引き戸が開くと、中から武子夫人が出てきてにっこりと微笑んだ。
「さあどうぞ」と中に入れと歓迎の態度を笑顔で示してくれる。
武子夫人は部外者の私が、いきなり訪ねてきても驚かないようだった。
いったいどうなってるの?
私は、彼に目で合図する。
答えを要求して祐一さんの顔を見ても、笑うだけで答えてくれない。
私は、こんなことをしている場合ではない。
自分の家財道具を自分の家に運びたいだけなんですけど。