オフィスの野獣と巻き込まれOL

『美帆、俺と一緒に来て』祐一さんにそう言われて、手を握られた。

手を握られた上に、『俺と一緒に来て』と涼しげな眼差しで男らしく言われた。

つい、くらっとしてしまった。

そんなふうに言われれば、断るすべはない。


彼に言われるまま、会社の車に乗った。

後部座席に二人で座り、ピッタリ寄り添ってお互いの目しか見ていなかったから、車がどこを走っているのかということに、無頓着だった。

車を下ろされた場所に、驚いた。

降ろされた場所に、まるで覚えがなかったから。


自分の家に戻ると思ってたので、全然知らない家に案内されて面食らった。

「ここは……」

しかも、連れて来られたのは綿貫家だった。

ずっと前に社内報で見たことがある。

こんなところに連れてきて、私をどうするつもりだろう。


武子夫人、今日も淡い色の高そうな着物を着ている。

背筋を伸ばし毅然とした態度でいるのは、会社とおんなじだ。
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