オフィスの野獣と巻き込まれOL
「ん、美帆?どこいくの?一緒に行こうか?
荷物が来るまで、何もできないだろう?それまで屋敷の中を見てくればいい」
「そうね。お前、案内してやりなさい」
武子夫人は、「私は、これで失礼するわ」と言って部屋を出て行ってしまった。
「祐一さん……」
私たちは、広い部屋に残された。
「なに?」
すっと、彼が手を伸ばしてきた。
この男、何考えてるんだ。
妻になる女性に内緒で、元部下を自分の新居に連れてきて、荷物を預かるなんて。
どうするつもりだろう。
私は、もう一度にらみつける。
睨みつけたのに、帰って来たのは惚れ惚れするような笑顔だった。
恋人に向けるような、すっと気持ちが表れるみたいな爽やかな笑顔。
こうしてみると。嫌みなくらい、いい男だ。
その彼が、溶けてしまいそうなくらい熱いまなざしで見つめてくる。
私は、彼の手を振り切って言う。
「私、やることがありますので……」もう一度言う。
ダメだ。いくら素晴らしくたって、所詮人のものだ。
山科君に言って、引っ越し会社と連絡を取らなくては。
今頃、私の荷物はどうしてるだろう。
それより、今日はどうやって過ごそうかな。
部屋、真っ暗かな。
電気止まってないといいけど。
これから、家に帰って荷物を探し出して、運びこむのか……
最悪だ。
きっと、布団で寝られそうにない。
もしかして。
そのこと、心配してくれたのか。
そっか。そうだよね。
それで、自分の家に連れてきてくれたのかな。