オフィスの野獣と巻き込まれOL
「とにかく、なんでもいい。
用事を見つけて会社に会いに来るといい。一日家にいても暇だろう?」

「暇というわけでは……」
私は、成り行きで花嫁修業のため退社したことにされていた。

だから、社に顔を出すと言っても、気を遣う。

大きな家で、さぞ掃除する場所もたくさんあるだろうと考えていたけれど。

家のことは、一切、武子夫人がそのまま仕切っていて、私の出る幕は全くなかった。

家で働く人たちも、武子夫人から当たり前のように指示を受けている。

私は、祐一さんの世話だけしていなさいと、何も仕事をさせてもらえない。

暇と言えば暇だ。

「なるべく早く帰ってくるよ」

「はい」

祐一さんは、ぎゅっと抱きしめると軽くキスをした。

そして、散々手を振ってから、名残惜しそうに家を出て行った。

一歩、外に出れば気持ちが切り替わっていつもの祐一さんに戻る。

たくさんの部下の前で、社長のでれっとした姿をさらしてもいいものか。

私にはわからないけど。


「美帆さん」

真後ろから声がかかってぎょっとした。

武子夫人が、いつの間にかそばにいた。

「はい」と返事をして振りかえると、

「ちょっといいかしら」とついてくるように言われ、部屋に案内された。

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