オフィスの野獣と巻き込まれOL
うちの会社の社員が、義彦君を批判する場面に出くわすと、私は口を閉ざしてしまう。
確かに、ほかの社員が言いうように義彦君は、優柔不断で決断力に欠けるかもしれない。
山科君のような優秀な社員からすると、能力不足の重役としか思ってないんだろうけど。
私にしたら、この会社での一番の恩人だ。
それに、一時は恋人だった。
「だって、専務は……」
山科君が表情を曇らせたから、口をつぐんでしまった。
私は、山科君に慌てて言う。
「知ってるよ。知ってるから、そのことで気を遣わないで。
義彦君、銀行の頭取のお嬢さんと、近々婚約するんでしょう?」
山科君の表情がみるみる険しくなる。
「知ってるなら、俺の言いたいことわかるだろう?
これ以上続けても。君が苦しい思いするだけだ」
「心配してくれてありとう。優しいね」
自然に口元がゆるんだ。
義彦君に、君とは結婚できないとはっきり言われた。
分かっていたことだけど。
ちょっと前までは、そのことで頭がいっぱいだった。
今は、遠い出来事のような気がするけど。
でも、心はまだ痛みを抱えてる。
「美帆は、俺みたいになりたいんだろう?」
「うん」
「だったら、手に負えない問題なんか深追いするな。適当なとこで引き返せ」
私は、驚いて山科君の顔を見た。
「うそ、山科君ってここで引き下がるんだ」
「普通の人間は、そうする。俺が珍しい訳じゃない」
彼は、そう言い切ってビールを飲み干した。
「うん。でもねえ、話しはそっちじゃ何だよね……
もっと別の問題が出て来て、とりあえず義彦君は置いとく」