オフィスの野獣と巻き込まれOL
「はあ?何言ってんの?」

ダン!と

ビールジョッキを置く音がして、山科君が目を細めてこっちを見た。

「お前、アホ専務以外にも、問題抱えてんのか!」

ぶつぶつ独り言をいいながら、こっちをにらみつけている。


「うるさいなあ。大きい声出さないで」出た、お節介やろうの本領発揮だ。

山科君が、身を乗り出してきた。ぐっと顔を近づけてくる。

「一体、何だ!お前、何やってんだ。
もう、いいから。普通に生きろ。
真面目に、コツコツと。夢みたいなことばっか追いかけるな」

山科君が、どっかの親父みたいに意気込んで言う。

山科君、クールな男って言われてるのに。

こんな大きな声出すなんて。

「別に、夢みたいなことばっか追いかけてるつもりはないんだけど」

「自覚がないから、余計に厄介なんだ」

どうして優秀な男って、こんなに慎重なんだろうと思う。

リスクを取らずに、安全策ばかり選ぶのだ。


「詰まんないなあ。やっぱ無理。山科君みたいな生き方、息が詰まる」

彼は、ふーっと息を吐きだすと腕組みして、椅子に座り直した。

「詰まんないとはなんだ。全く……なんだよ、心配してやってんじゃん」

「そうだね。ありがとう。おかげで勇気が湧いてきたよ。あいつのせいで」

「あいつ?」

「ん、ああ、何でもない」
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