オフィスの野獣と巻き込まれOL


誘いには乗ってくれたけれど。

堀川祐一の表情は、まるで変わらないと言えるくらい変化に乏しかった。

どちらかというと、面接官のようだった。

気に入ってもらおうっていうより、見てやるっていう態度で目の前に座っている。

私のこと見てやるって言うなら、いくらでも見てくれてもいいけど。

会議室じゃないんだから、少しぐらい話に付き合ってよ。

そう言えば、彼、しゃべりはしないけど。

私を無視してるわけじゃない。

反応しないだけで、ずっと私から目を離さない。

じっと見つめられてるけど。

見定めるような冷たい視線だから、見られても熱くなったりしないけど。


淡々と料理を口に運ぶ姿は、隙がなくて機械のようで見ていて飽きない。

食事が進んで終わりに近づいても、相変わらずにこりともしない。


総務課であらかじめ調べられたことによると、堀川課長は、転職組らしい。

彼は、中途採用で会社に来た。

私の会社は、自動車の部品メーカーとしては大きな会社だった。

自動車メーカーほど名が通っていないけど。

業界では、よく知られていた。


この人は、ヘッドハンティングされてうちの会社に来たのだろうか。

それは、珍しい方法だった。

社員名簿に彼の名前が載ったのは、ちょうど一年前から。

経理の担当課長として入社し、ずっと一人で仕事をしている。


普通は、役職がついてるんだから、部下がいるはずなのに。

どこにも所属しないで、一人だけポツンと机に座っている。

一人じゃ寂しいから、どこかのチームと机をくっつけましょうかと聞かれたみたいだけど。

『結構です』と断ったみたいだ。
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