可愛い人。
背が高くてすらっとした体型は、女の子たちに良い印象を与えていたことは同じクラスだからなんとなくは知っていた。
でも興味なんてなかった。
意識もしたことなんてなかった。
それなのに、偶然とはいえ聞いてしまったそんな一言……。
そしてそれを言った張本人が今、私の数十センチ先にいる…!!
この事実が揺らぐことはないから、とても複雑な心境だった。
ど、どうしてこんなことになっちゃったんだろう?!
私のことなんて放っておけばよかったんじゃ……?
山崎くんはいま、いったい何を考えてるんだろう??
彼をほんの一瞬だけ盗み見たけれど、私には解かるはずがなかった……。
と、その時!
カタッ。
「―――っ!!?」
物音とともに膝に何かが触れた気がしたっ!!
ビクッと肩が跳ねるっ!
と、同時に少し慌てた声が聞こえてきた!
「悪い!」
そう山崎くんが言うと肘をつくのをやめて改めて姿勢を正して、またペンを走らせる。
「え………? …あ!い、いいえ…………。」
膝と膝がぶつかってしまったみたい……!
この角度からじゃ見えないけれど、きっと私と山崎くんの足は私が思っている以上にかなり近いと思う!
態勢を少しでも崩してしまったら、またぶつかってしまうんじゃ…。
かあーっと一気に体温が上がるのを感じては、そわそわと落ち着きがさらになくなってしまった私!