平凡という至福
吟行

髪をといて、イヤリングをして、カバンをかけて、電車の乗車券と名札を首からさげて、自転車の鍵を持って、最後にモチベーション上げる魔法のリップをつけて。
さぁお出かけ。
外に出て太陽の呼ぶほうを振り返りながら伸びをして、自然とこぼれるあくびをつい見られてしまったちょうちょを追いかけて、追いつかずに膝に手をついた先に見えた花に微笑んで、写真にとろうとしたら邪魔をするいたずらな風と戯れて。
そんなことをしてるからなかなか出発できずにいるけれど、駐輪場に入ると毎回鍵を回す前にお隣のバイクでスネを打って、今日も声にならない鈍い痛み。
気を取り直して、規則的に地面を揺るがす電車を目指す。
こんなことを、本当にいつもやっている。
くだらないと言われたり、子どもみたいと言われたり、暇人と言われたり、成長がないと言われたり、お気楽と羨ましがられたりしながらも、私の今を私は精一杯生きている。
そして、みんなに幸せにしてもらっているのだ。
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