臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
コーヒーを淹れて、社長の前に置くと、彼は不機嫌そうな顔をしていた。

不機嫌そうな表情はよく見る。

「どうかしましたか?」

「今日の晩飯考えていた」

晩ごはんねぇ。もう少しで終わるけど、まだ就業中なんですけどね。

でも決裁書や書類や会議もないし、暇なんだろうな。

「美和は何が食いたい?」

「何故、私に聞くんですか。何が食べたいかおっしゃってくだされば、お店をお探ししますよ」

社長はいつも外食だ。気がつけば二ヶ月の間に色んなお高いお店を調べているかも。

まぁ、野村さんの復帰予定まで後一ヶ月だから、それまでって事だよね。


私なんかはキャリアとして上を目指している訳でもなく。

毎日の生活と、のんびりしたプライベートが守れればいい……くらいにしか考えていないから、元に戻れるなら純粋に嬉しい。

デスクに戻ると袖机から雑誌を数冊取り出し、パラパラとそれをめくった。

「昨日は中華を召し上がっていたので、今日は和食と洋食どちらがいいんですか?」

「お前は、何が食いたいんだ」

思えば、夕飯に連れ出される事も増えてきたなぁ。

あ。そうか。

「これはお誘いですか?」

「それ以外に聞く理由がないだろう」

「あのですね、ストレートに聞いたらどうなんですか。何も言わないのに意思表示したつもりにならないでください。“一緒に食事に行こう”が妥当ですよ!」
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