臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
私は真っ赤になり、社長はポカンとして──それからじっと私を見た。


……さすがに素面で歌わないからね?


「今日のおすすめはなんでしょう?」

「なんだなんだ、久しぶりに来たかと思えば、彼氏の前だとおしとやかなフリか? いつも通り親父なんかくれでいいよ」

社長の視線を無視して聞いてみたら、思いきりからかわれる。

「親父だなんて呼んでいないでしょうが! 徳さんのオススメ頂戴!」

「まずは飲みたいものくらいは決めろ。後は適当にいいの見繕うから」

わははと笑われて、徳さんが焼き鳥を焼きだした。

それを眺めてから、社長は俯いて笑っている。

思いきり肩が揺れてるし。

「なんかアットホームだな……」

「ここは特別な気もしますけどね。なんになさいます?」

普通に並んで座ってお品書きを見せると、社長はカウンターに肘をついて私を見ながら、片手でネクタイを緩めた。


……おや。これはやばい。社長と近い。

「ここで、その上品か慇懃無礼なのかわからない敬語はおかしいだろ」

慇懃無礼になったつもりはないが、敬語に気を付け過ぎて、たまにおかしな敬語になっているのは気づいている。

あれ、これ敬語? 謙譲語? どっちだってなる。

頭が混乱するのは、秘書としては二流だと思うけど。

とりあえず、自分にガッカリはともかく、社長、ちょ~っと近づき過ぎだと……。
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